農地転用

日本において、田や畑といった農地は希少価値の高いものであると定められており、農地の利用や開発は厳しく制限されています。

農地に太陽光発電システムを導入する場合には、農地法第四条・第五条に基いて然るべき手順を踏み、農地転用許可申請又は届出を行わなければなりません。

手続きに係る日数は、許可申請でおよそ3ヶ月、届出でおよそ1ヶ月と言われており、この日数を考慮して事業計画を組み立てる必要があります。
また、申請費用や行政書士等代理人への報酬なども必要となるため、予め事業予算に組み込むことも忘れないようにしましょう。

農地転用許可制度

農地

農地転用とは、田や畑などの農地をその他の用途として利用する場合、或いは形質等には何ら変更を加えなくても、人為的に農地を耕作の目的に供さない状態にする場合において、必要となる手続きのこと。
農地法第二条によると、農地とは耕作の目的に供される田や畑・果樹園、及び養畜の事業に供すべき採草放牧地と定義されています。

土地登記簿上では「山林」や「原野」等農地以外の地目であっても、現況が農地なら農地という扱いを受けます。
また、耕作されていない農地でも耕作しようと思えばいつでも耕作できるような土地も農地に含まれるため、注意が必要です。家庭菜園は対象外

農地法第四条

例として、農地に太陽光発電システムを設置したいという場合は、農地法第四条の許可または届出が必要となります。

許可申請を行うにあたって重要となるのは、どのくらい具体的に計画を立てているかということです。「何となく休耕地で太陽光発電を行いたい」という状況では、緊急性がないと判断され、申請が受け付けられない可能性があります。

「農地法第四条の規定による許可申請書」では、転用の目的と理由、事業の操業期間又は施設の利用期間、転用の時期や工期などが記載事項として設定されています。
事業計画に加えて、資金調達についても計画をはっきりさせている必要があり、許可が下りないケースの多くは、この部分が不透明であることが理由ではないかと言われています。

同時に、転用することによって生ずる付近の土地や作物、家畜などへの影響についても、影響がないことを証明しなければなりません。
特に転用地内からの排水について、排水とその水質は周辺農業に最も影響が現れるため、関係者の反対がないことの裏付けとして地域の水利権代表者の同意書を添付する必要があります。

事業計画が明確になっている場合でも、そもそも許可が不可能であるケースも存在するため、予め確認しておきましょう。

農地転用が許可されない場合

  • 農用地区域内にある農地、又は第一種農地、又は甲種農地である場合
  • 資金調達計画が不透明な場合、又は地域の利権者の同意を得ていない場合、
    又は農地の全てを申請に係る用途に供することが確実と認められない場合
  • 転用により土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合
  • 農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合
  • その他の周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
(参考:農地法第四条第二項)

農地法第五条

また、農地転用を目的に農地を売買したり賃貸借を行う場合は、農地法第五条の許可または届出が必要となります。
第四条とは異なり、農地の譲渡人と譲受人とで申請を行わなければなりません。申請書の記載事項は第四条とほぼ同じで、許可されない場合もほぼ共通しています。

農地転用の手続きの流れ

転用予定の農地が市街化区域に所在する場合

この場合、所轄の農業委員会への届出さえ行えば、都道府県知事や農林水産大臣の許可が必要ないため、スムーズに手続きを行うことが出来るでしょう。

転用予定の農地が市街化調整区域内にあり、面積が4ha以下の場合

面積が4ha以下の場合

農地転用許可申請書を所轄の農業委員会に提出し、農業委員会は意見書を添付して都道府県知事に送付します。
都道府県知事から都道府県農業会議へ諮問を行い、都道府県農業会議がそれに回答します。そこで問題がなければ知事から許可が下り、申請者の元に通知されるという流れになっています。

ただし、2ha以上4ha以下の場合は、都道府県知事は農林水産大臣と協議し、その回答を基に許可の判断を下します。

転用予定の農地が市街化調整区域内にあり、面積が4ha以上の場合

面積が4ha以上の場合

農地転用許可申請書を都道府県知事に提出し、都道府県知事は農業委員会の意見を基に作成した意見書を添付して農林水産大臣に送付します。
問題がなければ農林水産大臣から許可が下り、申請者の元に通知されるという流れになっています。

TOPへ