太陽光発電システムの基礎と架台

太陽光発電システムを検討する際、太陽光パネルとパワーコンディショナが重要視される一方で、太陽光パネルを固定する基礎や架台はおろそかにされる傾向があります。

一見、基礎や架台はどれも変わらないような印象を受けてしまいますが、遊休地で行う太陽光発電は最低20年の運用が前提となるため、基礎や架台の耐久性・信頼性は、事業の継続性を大きく左右する要素であると言えるでしょう。

基礎工法や架台を選定する上で確認しなければならないのは、まず塩害やアンモニアによる腐敗、腐食の被害がないかという事です。そういった影響が実地環境で見られる場合は、防錆製、防腐性に優れた架台を用いなければなりません。

次に、積雪地域であれば積雪荷重に耐えられるか、また台風による風圧荷重に耐えられるかといった確認が必要となります。これには基礎の引きぬき強度や重量が重要となってくるため、設計の段階でしっかりと目安を掴んでおきましょう。

基礎工法による違い

遊休地に太陽光発電システムを設置する際に用いられる基礎工法には、杭を用いて固定する「杭工法」とコンクリートを用いる「コンクリート基礎工法」の二種類があります。
それぞれにメリットと架台が存在しており、また事業予算や地盤の強さによって適した施工方法が異なってくるため、施工業者にアドバイスを求めるのがベストでしょう。

杭工法

■単管パイプ工法

地面に直接単管パイプを打ち込み、組み合わせることで架台を作り出す工法。
遊休地に設置される小規模(50kW前後)の太陽光発電システムにおいて、その手軽さを理由に採用されるケースが増加しています。

基本的に単管パイプには溶融亜鉛めっき(ドブ漬けめっき)が施されているため、20年の長期運用にも十分耐えられます。材料費も安く、初期費用を抑えられるため、コストパフォーマンスに優れた工法であると言えるでしょう。

ただし、単管パイプ工法で施工するには多少のノウハウが必要となるため、施工業者がこの工法にあまり慣れていない場合、工事長期化や工事費増加といった影響が懸念されます。
また、いくら材料費が安いと言えども、その規模が大きくなるともちろんの事ながら最終的な費用もかさんでしまうという影響も避けられません。

単管パイプ工法を用いるにあたって、重要な要素となるのが引抜き強度です。引抜き強度は地盤の強さによって異なってくるため、入念に事前調査をしなければなりません。十分に引抜き強度が確保出来ていなければ、太陽光パネルが強風に煽られた際、杭ごと持ち上げられるというトラブルが発生する可能性も否めないでしょう。
地盤が硬ければ容易に引抜き強度を確保出来ますが、軟ければ杭の本数を増やすといった手立てが必要となります。

■スパイラル杭工法

株式会社GTスパイラルが製造販売する「ネジリ加工」の施された基礎杭を用いる工法。
従来まで土木用基礎や農業用基礎の基礎杭として使用されていましたが、近年ではフィールド設置の太陽光発電システムの架台基礎杭としても大きな注目を集めています。

スパイラル杭工法は、単管パイプ工法と同様で容易に施工することが可能で、引抜きにも押込みにも強い事が特長です。軟い地盤にも施工することが可能で、採掘工事が必要ないため、工期の短縮や大幅な経費削減といった効果が期待出来ます。

コンクリート基礎工法

コンクリート基礎工法を用いる場合は、耐風圧荷重を考慮して基礎の重量を決定しなければなりません。一般的に、最大風速44m/s以上の非常に強い風が吹いた場合、設置角度20度の太陽光パネルが吹き飛ばされずに耐えるためには、1㎡あたり200kgの重量が必要と言われています。

例として、表面積1.65㎡の太陽光パネルを15枚(3段5列)用いた、設置角度20度のアレイが最大風速44m/s以上の強風に耐えるためには、基礎の重量は4.95t、体積にして約2.15立法メートルのコンクリートが必要となる、ということです。(一般的なコンクリートの質量は2.3t/1立米)

計算例
■布基礎

コンクリート基礎の中でも最も用いられる工法で、材料費や工事費が安いという特長があります。
布基礎では、まず図面を基に根切り線を書き出し、バックホーを用いて根切り(採掘)が行われます。その後、手掘りで調整し整形を行います。施工店による

次に、捨てコンクリートを流し込み、型枠と鉄筋を仕込んでコンクリートを流し込めば布基礎の完成です。詳細な工程は割愛

布基礎は、施工性もよくコスト面でも優れたメリットがあると言えますが、いまいち重量を稼げないということが懸念されています。強度を確保するためには根切りをより深く行う必要がありますが、深くした分必要となるコンクリートは多くなるため、コストの上昇は避けられません。

近辺に障害物があり直接的な強風は避けられる環境、または5度や10度程度の緩い設置角度の場合は布基礎でも問題ないと言えますが、開けっ広げの土地において、根入れ深さが十分でない布基礎を用いる場合、基礎の持ち上がりやそれに伴う架台の歪みなどのリスクは避けられません。

■ベタ基礎

架台から掛かる荷重をコンクリート基礎全体で支え、上からの荷重を平均的に地面に伝えられる方式で、布基礎が線と線で支える基礎であるとすると、ベタ基礎は面で支える基礎と言えるでしょう。

ベタ基礎は、他の工法よりコストは高くなるものの、型さえ用意してしまえば後はコンクリートを流し込むだけなので、非常に施工性に優れています。布基礎工法やサイコロ基礎工法と比べて容易に重量が稼げるため、予算に余裕がある場合はこの工法を選択することがベターでしょう。

ただし、ベタ基礎はどのような場合にでも有効とは言えません。
軟弱な地盤に設置する場合、また軟弱な箇所が点在する地盤に設置する場合は、地盤沈下を助長させる恐れがあります。
杭工法、コンクリート基礎工法を問わず、実地環境において入念な地盤調査を行うことは、基礎工事を円滑に進めるためにも必要不可欠といえるでしょう。

■置き石基礎(サイコロ基礎)

コンクリートブロックやサイコロブロックといったコンクリート二次製品にアンカーを取り付け、そこに架台を設置する方式。

近年のフィールド設置分野において、規模を問わず採用されるケースが増加しています。
既成品にアンカーや架台金具を取り付けるだけで済むため、工期や全体的なコストを大幅に削減出来ることが特長です。また、事業終了後の撤去や環境復元の面においても、ベタ基礎や布基礎よりも有利とされています。

しかし、既成品とは言え一つあたりの重量が大きい物を選択しなければならないため、それらの輸送費を考慮すると返って高額になることが懸念されます。 あまりに多くの数量が必要となる場合は、その他の基礎工法を検討することも視野に入れるべきしょう。

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