太陽光発電システムの仕組み
「太陽の光エネルギー」を「電気」に変換
太陽光発電システムの中心になっているのは、一般的に知られている太陽光パネル(太陽電池)です。
太陽光パネルは、太陽の光エネルギーを受けて直流電気を生み出すという働きをしていますが、一体どういう仕組みとなっているのでしょうか。
最も一般的と言える、単結晶シリコン型太陽光パネルを例に見てみましょう。
結晶シリコン型太陽光パネルは、p型とn型という電気的な性質が異なる2種類のシリコン半導体を重ね合わせた構造をしています。
この部分に太陽の光が当たると、電子(-)と正孔(+)が発生し、正孔はp型半導体へ、電子はn型半導体へ引き寄せられ、この時に電流が発生する仕組みとなっています。
それぞれの半導体に取り付けられた電極から直流電流を取り出し、パワーコンディショナという機器を用いて交流電力に変換することで、家庭内で使用したり電力会社に電気を売ったりすることが可能となります。
太陽光パネル(太陽電池モジュール)
太陽光発電システムは、電気を作り出す「太陽光パネル」をはじめ、太陽光パネルを固定する「架台」、太陽光パネルで発電した直流電流を交流電流へと変換する「パワーコンディショナー」、太陽光パネルが発電した電気を一つにまとめてパワーコンディショナーに供給するための「接続箱」、また各機器を接続するケーブルなど、様々な機器・部材から構成されています。
太陽光パネルの種類による違い
- ■単結晶シリコン型
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最も古くから使われている太陽電池の種類で、日本国内での住宅用太陽光発電に用いられる太陽光パネルでは最もスタンダードなタイプであると言えるでしょう。
他のシリコン系太陽電池と比べると多少高価ですが、変換効率が高いため、スペースの限られた住宅屋根など、特に変換効率が求められる用途で使われます。
- ■多結晶シリコン型
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遊休地で行う太陽光発電を始め、産業用太陽光発電の分野で多く用いられており、大量生産が安易であることがメリットとして挙げられます。
変換効率は単結晶シリコン型より低くなるものの、他の半導体の端材などを利用して製造出来ることから、製造過程の簡略化、コストの削減を実現しています。従来より、多結晶シリコン型は単結晶シリコン型よりも発電量では劣ると言われていますが、この言葉には語弊があります。
当然の事ながら、同じ設備容量であれば単結晶でも多結晶でも同じように発電するため、元より発電量に大きな違いは現れませんが、同じ設置面積でという条件下では、変換効率の高い単結晶シリコンの方がより多く発電するということに違いはありません。
- ■CIS型
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原材料にシリコンを一切使わず、数種類の元素を原材料として製造する太陽電池のこと。日本国内においては、ソーラーフロンティアが製造販売をしており、シリコン型と比べると比較的新しい種類の太陽電池と言えます。
結晶シリコン系と比べて発電層が非常に薄く、材料コストを低く抑えられることが特徴です。一見、数値上では結晶シリコン系よりも性能は劣るように思えますが、その実発電量の多さには目を見張るものがあり、結晶シリコン系を大きく上回ることが判明しています。
ただし、結晶シリコン系と同じだけの設備容量を得るためには、およそ1.5倍~の設置面積が必要となるため、ある程度の設置面積を確保できる場合は有効な選択肢となるでしょう。
太陽光パネルの性能を推し測る際に重要となるのが「公称最大出力」と「モジュール変換効率」です。公称最大出力は、その太陽光パネルの発電能力を表す値で、この値が高い程より多くの電力を発電することが出来るということになります。
製品によっては、太陽光パネル本体のサイズが大きいために最大出力もそれなりに高くなっているという製品もあるため、注意しましょう。
一方で変換効率は、受けた太陽光エネルギーのうち何パーセントを電気エネルギーに変換出来るかを表す値で、この値が高い程より効率的に発電することが出来ます。ただし、変換効率の高い太陽光パネルは、それ相応に価格も高くなる傾向があるため、注意が必要です。
採算性が求められる遊休地での太陽光発電事業においては、いかに短期間で初期投資費用を回収出来るかということが重要となってくるため、最も多くのコストメリットが得られる太陽光パネルが選択される傾向があります。
太陽光パネルを選定する基準となるもの
- ■第三者機関による認証
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太陽光パネルは基本的に野ざらしの環境下に設置されるため、高い信頼性と耐久性が求められます。
そのため多くの太陽光パネルメーカーでは、製品の品質を証明するために第三者機関が行う試験を受けているところがほとんどと言えるでしょう。有名な認証試験として、一般財団法人電気安全環境研究所の行うJET認証や、テュフラインランド社が行うTUV認証があり、これらの認証を受けている太陽光パネルは一定以上の品質はクリアしているということで、太陽光パネルを選定する際の一つの目安となります。
- ■PID耐性
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PID現象とは、高温多湿の環境下で太陽電池セル(モジュール内部回路)と接地されたフレームとの間に高電圧がかかった時に生じる出力低下現象のことで、その状態が長期間続いた場合は太陽光パネルの故障などの問題が発生すると言われています。
高温多湿な日本においては、今後このPID現象が多発するのではないかと懸念されており、太陽光パネルを選定する際にはPID耐性を含めた初期特性の確認を十分に行うことが肝要です。
- ■環境特性
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太陽光パネルの耐久性は、実地環境によっても大きく異なってくるため、設置予定場所の環境を入念に調べておくことも重要です。
具体的には、金属部分や樹脂材の腐食を引き起こす塩害はないか、酪農や畜産業を営む農村地域においてアンモニアの影響はないか、台風や降雪量をどうかといった事は最低限確認しておきましょう。設置場所の気象条件などを考慮してシステムを選択することは、発電事業を成功させるためにも必要不可欠であることは間違いありません。
太陽光発電システム その他の周辺機器
パワーコンディショナ
太陽光パネルで作り出された電気は直流電流になります。電力会社の電力網へ送り出す(売電する)ためには交流電気に変換する必要があり、その役目を担うのがパワーコンディショナです。
パワーコンディショナのパフォーマンスが十分でなければ、高効率・高性能な太陽光パネルを用いたところでロスが発生するだけであるため、パワーコンディショナこそが太陽光発電システムの要という意見も多く聞かれます。
パワーコンディショナの性能を推し測るものとして、「変換効率」と「定格容量」があります。
変換効率は「発電した電力をどのくらいロスなく変換出来るか」を示す値で、この値が大きいほど効率よく売電することが出来ます。例として、100kWhの電力を変換効率95%のパワコンで変換した場合、95kWhが実際の発電量になるということです。
定格容量は「どのくらい電力を出力出来るか」を示す値で、基本的に接続する太陽光パネルの合計出力数は定格容量以下でなければなりません。
定格容量が大きくなるほど価格も高くなるため、コストを重要視する場合は、システム容量が収まる最小値の定格出力を持つパワコンを選ぶことが安く抑えるポイントとなります。
小~中規模のシステムの場合は、一定容量ごとで系統を分け、低圧連系にすることでコストを抑えるといった手法があります。
システム架台
太陽光パネルを固定するための、いわゆる「スタンド」のこと。
太陽光発電システムにおいては軽視される傾向にありますが、発電事業の継続性を担う重要な要素であるため、しっかりと選定を行わなければなりません。
接続箱
太陽光パネルからの出力を一つにまとめ、パワーコンディショナに供給する配電設備の一つ。
集電箱
システム規模がある程度大きくなってくると必要となる機器です。
直流集電箱は、接続箱が複数個ある場合に用いられ、各接続箱からの直流電力をまとめる役割を担っています。一方で、交流集電箱は、複数システムのパワーコンディショナ出力系統をまとめる役割を担っています。
その他の部材
その他の部材として、各種ケーブルやコネクターなどが必要となります。いずれも電気設備技術基準に準拠した部材を選定・使用しなければなりません。
また、交換のしやすさや互換性に優れたものなどメンテナンス性などを考慮して選定することも、リスクヘッジとして有効な手立てと言えるでしょう。